顔面神経麻痺の治療について

 2つに区分されます。 「内耳道」より末梢の神経障害であれば、「末梢神経麻痺」。それより上の神経障害であれば、「中枢性の神経麻痺」になるようです。 鍼灸治療の適応は、主に、末梢性の麻痺になります。

中枢性麻痺の特徴
 1、額のしわ寄せ正常
 2、患側の眼を閉じることが出来ない
 3、随意運動と反射的な表情運動との間に解離がある。
 4、咬筋マヒが合併すると、下顎が健側に偏る。

末梢性麻痺の特徴
 1、麻痺側の額のしわの消失
 2、麻痺側の眼が閉じない、閉じようとすると眼球が上を向く(ベル現象)
 3、小鼻も健側に引っ張られる
 4、麻痺側のほうれい線の消失
 5、口元も健側に引っ張られ口元が歪む
 6、口をとがらせようとすると、麻痺側に寄る
 7、涙腺分泌異常(涙目または乾燥目)
 8、味覚障害(舌前三分の二の味覚障害
 9、聴覚過敏

原因と種類(参考書により、種々あり。 ここでは、末梢性の麻痺について

1、約60パーセントが「ウイルス感染」と言われます。その代表が、「ベル麻痺」
2、20パーセントが「帯状疱疹ウイルス」による「ハント麻痺」
3、約15パーセントが「交通事故」などによる「外傷麻痺」
4、その他、先天性の奇形による先天麻痺、耳腫瘍、耳神経腫瘍などによる、腫瘍性麻痺。また、中耳炎麻痺などがあります。

羅患年代と大まかな治癒率
1、ベル麻痺
 男女差関係なく、男性は、30歳代、女性は、20歳代と、50歳代に頻発しやすい。治癒率は、3週間以内に回復が始まり、80パーセント治癒
2、ハント麻痺
 中高年に多く、最近特に有効な薬が開発され、治癒率は、5~60パーセント
3、外傷性麻痺
 受傷直後に起こるものは、治癒率が低いが、1日以上立って起こるものは、治癒率が高い
4、中耳炎
 急性の小児の場合は、治癒すれば治る。慢性によるものは、ほとんどが真珠膿性中耳炎なので、手術が必要。また、中耳炎は、髄膜炎などの合併症を起こしやすいので、要注意。

鍼灸治療
 早ければ早いほど経過が良いです。初めの数日は、理想的には、毎日来てもらった方が早く良くなります。麻痺後、2週間経過した方は、治療が手間取り、数ヶ月以上経過してしまうと、完全に回復は難しくなります。ですが、症状は軽くなります。当院では、2ヶ月までなら、なんとか完全に近い回復をされた方の症例が何例かあります。

 基本 寸1 1番と短い針を浅く顔面部に刺します。深く刺すと悪化しますので、注意です。 最初は、仰向けにて顔面部に置鍼
を20分程度。 次に、横向きになってもらい、えい風けつに鍼をします。 ここは、出来れば、2寸の3番にて深鍼を。出来なければ無理せずに。 最後うつ伏せにて、肝ゆ、脾ゆ、腎ゆなどに、軽い鍼や、お灸(間接灸)をして、内臓を整え、治癒力を増します。

 大体の流れはこんな感じになります。

臨床のコツ
 顔面部の刺鍼は、押し手は、丸くし、浅く刺す。 押し手に、ぴりぴりとした得気が得られれば1番良い。ここで言う得気とは、響きとは違います。気を巡らすので、わからない方は、イメージで。押し手も、経絡に流す時は、三日月型にしますが、ここでは、満月型で。出来れば、鍼を刺しながら経絡の流注を意識するといいでしょう。 一指し指と親指の合わせた下部、皮膚接触面にてピリピリした感触や、皮膚から得られる情報を感じます。 その際、下に加圧をかけてしまうと、感覚がわからなくなりますので注意して下さい。気の流れが悪くなり、顔が麻痺しているので、その流れを良くする治療です。

中国での臨床例